01 / 暮らしの話から
物価は上がった。では、給料は?
熊本の暮らし、どうですか。熊本市の物価統計で、鶏卵1パック(10個)は319円(2026年7月、前年同月比+9.2%)、令和4年平均214円の約1.5倍。牛乳1リットルも287円(同年7月、令和4年平均221円)。物価は確実に上がっています。では、私たちの給料や収入はそれに追いついているでしょうか。
指標としての「県民所得」。熊本の県民1人当たりの所得は年292万8千円。全国平均は352万1千円、東京は636万3千円です。※県民所得は、企業所得なども含む総額を人口で割った指標です。個人の給与額ではありません。
目的としての「手取り」。熊本には熊本の強みがあります。まずは県民所得を全国平均352万1千円まで引き上げることを確かな一歩目にし、その先に、熊本で働く皆さんの手取りを着実に上げていきます。
02 / 出荷額と所得は、別物
なぜ、大工場が私たちの懐に直結しないのか
「半導体の巨大工場(JASM)が来て、熊本は景気が良いのではないか」と思われるかもしれません。工場で働く方々の給料は、確かに伸びています。しかし、統計に現れる県民1人あたりの所得は、まだ全国平均に届いていません。ここには、構造的な理由があります。
県は令和7年3月に半導体産業推進ビジョンを改定し、令和14年度(2032年度)までに半導体関連産業の製造品出荷額等を2兆8,000億円にする目標を掲げています。この目標は評価しています。ただ、一つ押さえておくべきことがあります。「出荷額(売上)」と「熊本の人の所得」は別物です。どれだけ生産が増えても、そこから生まれる利益は出資した会社のものになる。それが経済のルールで、誰かを責める話ではありません。
工場で働く人の給料は伸びています。ただ、事業から生まれる利益の大部分は、出資した会社へと戻っていきます。仕事を受ける側だけでなく、事業を持つ側にも回っていくこと。そのための構造を、熊本の中に育てる必要があります。
熊本県「くまもと半導体産業推進ビジョン」令和7年3月改定(ページ番号 0168486、計画期間 令和5〜14年度/2023〜2032年度)
03 / 目指すべき姿
熊本自身が「事業のオーナー」になること
熊本は、誰かの下請け工場ではありません。熊本自身が、利益を生み出し、利益を受け取る事業の持ち主(オーナー)になることが必要です。そして、県民所得の内訳を見ると、道筋が見えます。
熊本には、その底上げに必要な種がすでに揃っています。技術の種――半導体・電子デバイス、バイオテクノロジー、材料技術。県内の大学・研究機関が何十年もかけて蓄積した研究の厚みがあります。現場の種――県内46,830社の企業が持つ現場の技術力と、工場現場で培われた優れた人材。
優れた「研究」と「現場の力」が、ここに揃っている。あとは、それらを新しい事業や会社に育てていくこと。技術を事業に「つなぐ人」を、熊本に増やすことです。
総務省・経済産業省「令和3年 経済センサス・活動調査」(2021年)― 熊本県内の民営企業数 46,830社
04 / 政策提案
熊本県版EIR構想 ── 技術を事業に変える仕組み
そこで私は、「熊本県版EIR(客員起業家)構想」を提案します。事業を立ち上げた経験のあるプロ人材を県が一定期間招聘・委託し、大学の研究室・地場企業・投資家の間に入ってもらう。「つなぐプロ」が間に入ることで、熊本の技術から新しい事業を連続して立ち上げる。
新しい事業が生まれれば、既存の地場企業の新しい取引先になる。地場企業の技術が、次の新しい事業の土台になる。人が移り、事業を作った経験がノウハウとして熊本に残ります。加えて、熊本の強みである農業や観光も、既存の地場企業の高付加価値化という文脈で同じ枠組みに乗せる──ブランド化、加工、体験設計、海外販路まで、地場の現場が「利益を受け取る側」に回れるよう伴走します。熊本を「誰かの下請け工場」から、「自ら事業をつくり利益を生み出す県」へ。